異世界[恋愛]

『挨拶もできない木偶』と笑って令嬢を追放したら、翌月、姉の訳した条約一行で国が戦争になった件

海運で栄えるレスリア王国の外務を握るヴェスパー侯爵家に、「挨拶もできない木偶」と侮られる令嬢がいた。ノーラ。だが隣国との条約も、往復の親書も、使節の応対も、六年、彼女が一人で訳し、下交渉してきた。社交で世辞が言えないだけで、六か国語と古語を港で独学した腕は、国に二人といない。姉ミレイユが「語学の才媛」として手柄を横取りし、無能の噂を流していただけだ。
 ある夜会。格上の婚約者が言い放つ。「挨拶ひとつまともにできない木偶と、誰が添い遂げるか」。婚約破棄、そして勘当。姉は嗤い、父は目をそらした。
 ノーラは、一言だけ告げて去る。「批准式の訳は、どうか原文と照らして」。誰も聞かなかった。
 流れ着いた国境の港町で、ノーラを拾ったのは、身分を伏せた流れ者の使者・レイフだった。腕も素性も知られぬまま、二人は異国の言葉と港の暮らしで助け合う。彼が惹かれたのは、絡まれた子供を庇って啖呵を切る、その気っ風だった。
 そして、翌月。彼女のいない批准式で、姉は「休戦」を「降伏」と訳した。隣国オルレンの面子は潰れ、条約は破れ、国境で戦端が開こうとしていた。姉が開いた書架は、六か国語のまま一行も読めなかった。言葉は、訳した者の手柄にはならない。ただ、毎日両側を聞いた者にしか、橋は架けられないだけで。

異世界転生 / 女主人公 / 西洋 / ハッピーエンド / 身分差 / 悪役令嬢 / ざまぁ / 婚約破棄 / 追放 / 溺愛 / 王子 / 専門職 / スカッと / 無能と誤解 / 痛快 / 異国
短編 2026/07/15 22:00更新
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最終取得日時:2026/08/30 12:08
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