ヒューマンドラマ[文芸]

姑は方位を信じて医者を信じない。私は妊娠中、立ったままご飯を食べるしかなかった

昼食を食べようとフォークを手にした瞬間、義母の佐伯千代子が勢いよく駆け寄ってきて、私の手を叩いた。フォークが皿の縁にぶつかり、乾いた音を立てる。

「それ食べちゃ駄目! 妊婦がうさぎなんか食べたら、口唇裂の子が生まれるのよ!」

 床に落ちたうさぎ肉の煮込みを見つめ、怒りを飲み込みながら椅子に座ろうとした。ところが今度は、義母が椅子を乱暴に後ろへ引いた。

「今日はこの方角が悪いの。御厨先生が、妊婦はここに座っちゃいけないって言ってたでしょう。今日は立って食べなさい」

 妊娠を知った日から、義母は私たちの家へ転がり込んできた。毎朝、古びた暦と九星の方位盤を広げては、ソファは駄目、ベランダへ出るな、今日は寝室を使うなと、私の生活を勝手に決めていく。

 そして夫の佐伯直人は、そのたびに同じことしか言わなかった。

「母さんも赤ちゃんが心配なんだよ。少しくらい我慢してやって」

 あの日、ようやく分かった。

 私を息苦しくさせていたのは、義母の馬鹿げた迷信だけではない。

 この家には最初から、私の味方が一人もいなかったのだ。

シリアス / 女主人公 / 現代 / 嫁姑問題 / モラハラ夫 / 離婚 / 妊娠 / 迷信 / 毒義母 / ざまぁ
短編 2026/09/05 16:00更新
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最終取得日時:2026/10/01 12:09
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