ヒューマンドラマ[文芸]

その橋は帳簿にございますわ。ご安心ください、三年前に架け替えておりますので

 ハルデン子爵領に、川は三本ございます。

 帳簿には、橋の普請が十一件ございます。

 二十年、この家は王国へ普請の届けを出し続けてきました。橋が落ちた。堤が崩れた。水車が止まった。そのたびに上納を減らしていただき、そのたびに直したと書いてあります。減らしていただいた額は金貨千二百枚。この領が四年働いて得る額でございます。

 橋は、一つも架かっておりません。

 村の方がご自分で丸太を渡し、板が流れれば載せ直しておいででした。石は切らされ、屋敷の新しい棟に積まれました。

 先月、その丸太で荷運びの男が一人死にました。屋敷はこう言いました。あの橋は三年前に架け替えたばかりだから、落ちるはずがない。渡り方が悪かったのだろう、と。

 王家の財務監査官リーゼロッテ・フェルマー、十八歳。

 子爵は帳簿を差し出して、胸を張ってこう言いました。

「どうぞ、隅から隅までご覧ください。一つの数字も間違っておりません」

 ええ。間違いは一つもございません。

 ですから、わたくしは数えてまいります。

 その橋は帳簿にございますわ。ご安心ください、三年前に架け替えておりますので。

AI直接使用 / アイリスIF9大賞 / ESN大賞11 / 女主人公 / 西洋 / 中世 / ハッピーエンド / ミステリー / 後味爽快 / ざまぁ / 令嬢 / 貴族 / 自業自得 / 冤罪 / 横領 / 因果応報
短編 2026/08/26 20:05更新
10,672字 51%
日間P
-
総合P
838
ブクマ
16
平均評価
8.22
感想数
0
レビュー
0
評価頻度
612.5%
評価P
806
評価者数
98
週間読者
194
日間イン
2回
ベスト
222位
最終取得日時:2026/09/22 12:07
※googleにインデックスされているページのみが対象です