ヴァーテックス・クライシス ~星屑の魔女と、もう一つの真実~
忘れられた魔法が、再び世界を満たし始めた時代。
王立アカデミーに、一人の「劣等生」がいた。彼女の名はエリアーヌ。旧態依然とした魔法理論に異を唱え、周囲から「異端者」と嘲笑される日々を送っていた。
だが、夜の帳が下りる時、彼女はもう一つの顔を持つ――《翠玉の託宣者》。翠玉の仮面で素顔を隠し、失われたはずの超絶的な魔法で、王国を揺るがす難事件を次々と解決する、正体不明の英雄だ。
数万年前に崩壊した超文明「先駆者」。彼らが遺した二基の「魔法粒子発生装置」は、千年前に別の帝国が魔法を浪費し尽くして以来、再び千年もの時をかけ、世界を魔法の力で飽和させようとしていた。その「世界の歪み」に唯一気づき、対処できるのは、アカデミーでは誰にも理解されないエリアーヌの「異端」の知識だけ。彼女は、自分を嘲笑う人々が暮らす平和な日常を守るため、孤独な戦いを続けていた。
ギルドの最高難度依頼を一夜にして解決し、王国の深部に潜んでいた帝国の諜報機関を単独で壊滅させる。その圧倒的な功績により、《翠玉の託宣者》の名は、ギルドや王家から絶大な信頼を得ていく。しかし、その裏で、アカデミーでの彼女の立場はますます悪化し、ついに退学の危機にまで追い込まれてしまう。
なぜ、正当な才能が虐げられなければならないのか?
なぜ、真実から目を背ける者たちが、権威の座に居座り続けるのか?
その理不尽さが頂点に達した時、少女は決断する。偽りの学び舎に、訣別を告げることを。
一方、その頃。大陸の辺境では、何者かが、世界の法則を書き換えるほどの「奇跡」を、無邪気な遊びとして振りまいていた。《沈黙の厄災》と呼ばれるその現象を、腐敗した帝国の聡明な皇子・リオンが、世界の未来を変える鍵として追い始める。
これは、自らの手で運命を切り拓く少女が、この世界に本当の輝きを取り戻す物語。
---書籍化等のニーズがあるようでしたら、9月8日までに連絡ください---
輝夜~かぐや~
61,703字 (1990.4字/話) 29%