ホラー[文芸]

幸運のマフラー

「ういっ」

「うわっ! ちょっとやめてくださいよぉー」

「はははははは!」

 大声で笑う上司を前に、彼は苦い表情を浮かべたが、すぐに顔を綻ばせて一緒に笑った。危ない、危ない……。ここは薄暗く、上司は鈍感で無神経とはいえ、嫌な顔をしていることに気づかれると、さらに面倒な絡まれ方をされてしまう。彼はそう思った。
 ここはとあるバー。彼は仕事終わりに上司に飲みに誘われ、二軒目にここに連れて来られた。彼は上司に聞こえないように小さくため息をつき、首筋を擦った。先ほど、そこにグラスを当てられたのだ。まだヒヤッとした感覚が残っている。
 上司は機嫌良さそうに酒を飲み、喉を鳴らした。こんな風にいつまで経っても子供のような悪戯が好きな人間にはなりたくないものだ、と彼はそれを横目で見る。

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短編 2024/08/18 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:23
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