ヒューマンドラマ[文芸]

老若戦争

 駅を出てしばらく歩くと、いくつか人の姿を見かけたので、おれはほっとした。
 駅と言っても無人駅。ここはド田舎で、おれの故郷だ。しばらく顔を見せずにいたから、寂しがっているのだろう、ここで一人で暮らしている母に電話で帰ってくるよう言われ、おれは仕方なくやって来たのだ。
 ほっとしたと言うのは、畑に刺さる不気味な案山子ではなく、ちゃんとした人間に出会えたからというわけではない。その老人たちがおれに向ける目がこう言っているのだ。『よそ者が来た』と。
 おれは故郷が嫌いだ。ここには何もない。あるのは老人と、ここから出て行けない連中だ。ああ、一応、アレがあるが、その話はいい。おれはどれも嫌いなんだ。そんな連中から、よそ者に思われたことが嬉しかったのだ。
 どこからか暴走族めいたバイクの音が聞こえてきた。それに続いて、害獣撃退装置から出る銃声も。漂う野焼きの匂い。どれも懐かしく、今では愛おしささえ感じる。ここを離れ、自分が都会に染まったと思えるから。

「ただいまー」

「ああ、おかえりぃ! 無事に来れたんだねぇ」

 家に帰ると、母が玄関まで慌ただしく駆けてきて、おれにそう言った。

「ははは、大げさだなぁ」

「いやぁ、元気? 襲われなかったかい?」

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短編 2024/06/14 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:27
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