現実世界[恋愛]

「月を見るたび思い出しなさい!」とキメ顔で言って去ったあの娘を見つけ出し、俺は……

中学二年生の夏、僕は塾帰りに不良達に絡まれ大ピンチだった。
カツアゲされる――だけならまだいいのだが、最悪なことに彼らの目的は僕の体らしい。

「グヘヘ、引き締まったイイ尻をしてやがる……」

スポーツの類はしていないが、我が家は常に心身を鍛えるべしという家訓があり、僕は文系の割には引き締まった体つきをしている。
どうやらそれが仇となり、狙われることになってしまったらしい。

「クッ……、殺せ……」

菊の花を散らすくらいなら、命を散らす。
そう覚悟を決めた瞬間――、男の一人が何かに気付く。

「ん? なんだ嬢ちゃん、もしかして参加希望か? 残念だが、俺達は美少年専門でなぁ。そういう願望があるなら、お隣の路地をオススメするブベァッ!」

男が最後まで言い終わる前に、強烈な打撃が腹に突き刺さる。
男達は瞬間的に近付いてきた少女がヤバイ存在と悟るが、時すでに遅く暴虐の嵐が吹き荒れた。

鮮血に染まる赤髪の少女は、真紅に染まった指をペロリと舐め上げてから、頭上の月を指さす。

「月を見るたび思い出しなさい!」

そう言い残し、赤髪の少女は去っていった。


あの夜以降、僕――いや、俺は、一から体を鍛え直した。
変わり者の師に武術を習い、戦うすべも身に付けた。

そしてある程度自信がついたころ、再び夜の街へと向かう。
目的は勿論、もう一度あの少女と会うためだ。

しかし、いくら夜の街を探し不良達と喧嘩をしようとも、少女が現れることはなかった。
あの少女は、一体どこへ行ってしまったのだろうか……

結局少女と再会することはなく、俺は高校生になった。
あの夜からもう、1年以上が経過してしまった……
しかし、俺は諦めない。
必ず彼女と再会し、そして――


※この作品は武 頼庵(藤谷 K介)主催の『月(と)のお話し企画』参加作品になります。

男主人公 / ハッピーエンド / 月(と)のお話し企画 / 中二病 / 吸血鬼 / バトルラブコメ / ハッピーエンド? / ネトコン12感想
短編 2023/09/26 06:16更新
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最終取得日時:2024/05/16 12:26
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