私の婚約披露パーティーで、婚約者は親友と誓いを交わした。
婚約披露パーティーで、私の婚約者は親友の手を取って会場の中央に立っていた。
司会者に促され、二人はこの日のために用意されていたメッセージを読み上げた。水原莉央が着ていた白いドレスは、衣装合わせのときに私がいちばん気に入っていたものだった。
その隣には、柏木遼平。
私は少し離れた場所で、控えめなシルクのワンピースを着て立っていた。
事情を知らないゲストの中には、私を受付を手伝っている友人だと思った人までいた。
本来なら、遼平の隣にいるはずだったのは私だ。
高校時代から付き合って、八年。
いつか結婚しようと何度も話してきた相手が、別の女性の手を取っている。
途中で遼平がステージを下りてきた。
「莉央の新作、ちょうど婚約とか結婚式の場面を書いてるんだって。実際の空気を知りたいらしいから、今日くらい付き合ってやってよ」
私の顔を見て、声を少し落とす。
「本番の結婚式で隣にいるのは真帆なんだから」
八年間、何度も見てきた顔なのに。
目の前にいる人が、ずいぶん遠く見えた。
前に式場のブライダルフェアへ行ったときも、莉央は「小説のために模擬挙式を体験したい」と言った。
ウェディングドレスを着て、バージンロードを歩いてみたい、と。
遼平は笑って付き合った。
そして今日は、婚約披露パーティーの空気を知りたいと言われ、また隣に立っている。
私と遼平の八年間は、少しずつ莉央の「実体験」に変わっていた。
ステージの上で、司会者が微笑む。
「それでは、お二人で記念ボードにサインをお願いします」
莉央が遼平を見る。
二人は笑いながらペンを取った。
会場に拍手が広がる。
私は握りしめていた手をほどいた。
もう、この人と先の人生を歩くつもりはなかった。
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