ヒューマンドラマ[文芸]

 むかし、三吉という男がいた。大の酒好きで、毎晩のように呑みに出かける。今夜も、上機嫌で暗い夜道を歩いていた。
 たまによろけるたびに、「おっとと」と呟いては、へらへら笑う。自分が転びそうになることすら楽しくて仕方がない。そんな頃合いだった。

「へへへ……おや?」

 三吉はふと、向こうからよろよろと歩いてくる人影に気づいた。あちらさんも酒にやられた口かな? そう思って面白がり、その動きを真似しながら近づいてみる。だが、様子がどうも違う。
 よく見れば、杖も持たずに歩く足の悪そうな老人だった。背中は大きく曲がり、ひょろりとした身体を揺らしながら、一歩ごとにやっとの様子。こんな真っ暗な道を一人で歩くなんて危なっかしいな……と思ったら案の定。老人はその場でぺたりと膝をついた。

「へへっ、こりゃいけねえ」

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短編 2025/06/03 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:08
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