コメディー[文芸]

誰でもよかった

 ある夜。彼は息を荒げ、ふと自分の手を見つめた。震えている。手だけでなく足も、それに動悸もしている。喧嘩といった争い事に不慣れな彼はその余韻に心がまだ波立っていた。
 つい先ほど、男に突然襲い掛かられた彼は混乱する中、必死に抵抗した。そして、激しい揉み合いの末に、その男を取り押さえ、縛り上げることにどうにか成功したのだ。
 彼は大きく咳き込み、そして訊ねた。「どうしてだ、なんで……」
 その男はこう答えた。「誰でもよかった」と……。

「……いや、嘘だろ」

「ん?」

「いや、ん? じゃなくて、誰でもよかったなんて嘘だろ」

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短編 2024/05/25 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:27
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