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彼の世界

 ある日、彼はふと『世界を一周しよう』と思い立った。立ち上がり、世界の端に手を触れ、ゆっくりと歩き始める。彼の小さな歩幅でも、一周するのに一分とかからなかった。
 巨大な瓶のようなガラスの部屋。そこが彼の“世界”だった。
 食事を与えるための小窓が一つあるが、彼の側からは開けられない。部屋の上部には通気口があり、そこから数本のパイプが壁に向かって伸びている。外から見れば、それはまるで植物を生けた瓶のようだった。ともすれば、彼はその中に沈む種子なのかもしれない。

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短編 2025/02/24 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:14
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