全ては、五年前から始まっていた。
当時の公爵令嬢ルーナと、第二王子レオが初めて出会った日から。
無能な第一王子ジョシュアを王位継承者から排除すること。そのために、ルーナは自ら王太子の婚約者となった。三年間、完璧な婚約者を演じながら、密かにレオと手紙をやり取りし、情報を交換し、罠を仕掛けていく。

聖女グレイスの配置。婚約証書第十五条の確認。魔法医師ギルドからの調査報告書の入手。全てレオが影で動いた結果だ。

三年後、ジョシュアは自ら婚約を破棄した。結果は、三十億金貨の請求、王位継承権の放棄、国外追放。

誰にも気づかれなかった。氷の女公爵と影の王子が、五年かけて王国の未来を乗っ取ったことを。