三年前、突如世界を襲った“アダムウイルス”。
それは男性にのみ致死性を持ち、結果として世界中の男の99％が命を落とした。

今や男は珍しい存在となり、社会の常識も人間関係も、静かに形を変えていく。

高校生・早乙女蓮は、奇跡的に生き残った“数少ない男子”のひとり。
通っている学校では、男子はたったの三人。
毎日が注目の的で、少し歩けば誰かに声をかけられ、逃げ場のない日々が続いていた。

それでも、家に帰れば落ち着ける――はずだった。

だが、出迎えてくれる義妹・瑠花の様子が、最近どうにもおかしい。
一緒に過ごす時間、ふとした仕草、夜中のすれ違い。
少しずつ、確かに、彼女は変わってきている。

世界が変われば、人も変わるのか。
それとも――変わったのは、俺の方かもしれない。

兄と妹、かつては“家族”だったふたりの距離が、少しずつ少しずつ、揺れ始める。