コメディー[文芸]

魔王様

 月にうっすらと雲がかかる、薄暗い夜。風を切り、闇に覆われた大地を駆け抜ける一頭の馬。その背中には父親と息子が乗っていた。
 父親は腕に抱きかかえた息子にちらと目をやり、訊ねた。

「坊や。どうして顔を隠しているんだ?」

 息子は答えた。怯えたように、体と声を震わせて。

「お父さん……見えないの……? 魔王がそこにいるんだよ。ぼく、怖いよ……」

「魔王? これはただの霧だよ。だいたい、どうしてそれが魔王だってわかるんだ? 幽霊ならまだしも……」

「名乗ったからだよ……。魔王がぼくを誘惑してくるんだ……。面白い遊びとか、綺麗な服に花とか、女の子がどうのこうのって……でも、ぼく、はっきり断ったんだ……。だって嫌だもん、お父さんと離れるのは……。ん? お父さん、聞いてる……?」

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短編 2024/09/13 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:22
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