ハイファンタジー[ファンタジー]
インベントリスキルを利用して、異世界でのんびり商売がしたい。
少年が世界を知ったとき、彼はすでに盗賊団の荷物運びとして生きていた。
彼には〈インベントリ〉という希少な力があった。
触れた物を空間に収め、望めば取り出す――ただそれだけの能力。
けれど盗賊にとっては、それが“手放せない便利な道具”だった。
彼が知る限り、家族の顔は思い出せない。
後になって聞いた話では、赤子だった彼は盗賊団に襲われた村から奪われ、両親はその場で殺されたという。
本来なら奴隷として売り払われていたはずだ。
ただ、彼が珍しいスキルを持っていたせいで、盗賊たちは彼を商品ではなく“所有物”として囲った。
そうして淡々と続いていた日々は、ある夜—唐突に終わりを迎える。
闇を裂く咆哮とともに、冒険者たちが盗賊団に突撃した。
炎が天を染め、鋼の閃きが影を断ち切り、矢が走るたびに悲鳴が消えていく。
少年は焼け焦げる匂いの中、命じられるまま盗賊たちの財宝をインベントリから取り出し、冒険者へ渡した。
指先が空気をつかむように虚しくなる。
あれほど重く感じていた“荷物”が、すべて、自分の手から離れていく。
――それは、彼の人生から盗賊団という枷が抜け落ちた瞬間だった。
混乱が収まったあと、少年は奴隷として冒険者に引き渡される。
次の行き先さえ知らぬまま、ただ静かに歩き出した。
しかし、この時の少年はまだ気づいていない。
〈インベントリ〉という力が、やがて彼を“商人”へと導き、
自分の意志で未来をつかみ取る武器になることを。
R15 / 残酷な描写あり / 異世界転生 / オリジナル戦記
全90話連載中
2020/05/21 10:25更新
196,947字 (2188.3字/話) 48%
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最終取得日時:2026/08/10 02:01
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