コメディー[文芸]
知ってた知ってた
「こんな、こんなことって、クソ、クソオオオォォ!」
とある建物の薄暗い部屋。弱々しい裸電球の下、打ちっぱなしのコンクリートの床に跪いた彼は、その腕に恋人を抱き締め、そして慟哭した。
その時だった。部屋の隅に広がる闇から、手を叩きながら男が現れた。その男は彼に言った。
「いやぁ、ここまで君の行動を見させてもらったが、実にお見事だったよ」
「あんたは……」
「ふふふっ、驚いたかね。だが、もう一つ驚くことがある。……君は合格だよ」
「ごう……かく……?」
「そう、これが最終試験だったのだ。最愛の人を犠牲に、自分が生き残るというね。いやぁ、実に素晴らしい。君は見事にやってのけた! はははっ、これで君はめでたく我々、組織の一員というわけだ! はははははっ!」
「そんな、そんなの……」
「ふふっ、なんだね? ああ、『人の命を何だと思っているのか』かね? そういった凡人たちは、さらにこう言うんだ。『合格が彼女の死と引き換えだと事前に知っていたら辞退していた』とね。でも、君は違うだろう? 君の頭脳は実に素晴らし――」
「知っていましたよ」
「え?」
未設定
短編
2024/07/18 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:25
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