ローファンタジー[ファンタジー]

税金の使い道

 男は目を覚ました。目の前の靄がゆっくり晴れていくにつれて、頭も次第にはっきりとしていく。今、浮かび上がった記憶は、まるで夢の断片のように朧気で、しっかりと掴んでいないとどこかへ消え去ってしまいそうだった。
 拳を握り、記憶をかみしめる。そして、彼は理解した。自分は――

「ちくしょう……ちくしょおおおおおおぉぉぉう!」

 死んだのだと。彼は膝をつき、雲のような地面を拳で叩いた。ここは間違いなく、死後の世界。死の実感がじわじわと胸の奥から湧き上がってくる。
 彼は叫んだ。生きていたこと、人生が今、過去になろうとしている。受け入れられるはずがない。濁流の中、流されまいと必死に岩にしがみつくように抗った。
 そんな彼に、そっと声をかける者がいた。

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短編 2024/12/15 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:17
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