異世界[恋愛]

最後のベルで離縁された私。再婚を申し込んだ婚約者は、夫になった夜、最初のベルで飛んできました

「二度目を鳴らす前に来い」
 前夫は妻の名を呼ばず、机のベルを鳴らした。
 酒を持ってこい。
 書類を探せ。
 上着を脱がせろ。
 七年間、駆けつけ続けたイレーネを、最後のベルの先で待っていたのは離縁状だった。
 それから一年。
 イレーネは、自らの過ちで結婚に失敗した伯爵レオンハルト・ヴァルデックと再婚する。
 婚礼の夜、彼が示したのは、イレーネの私室に置かれた銀のベルだった。
「私に来てほしいと思ったときだけ、鳴らしてください」
 迷った末に一度鳴らすと、隣室で椅子が倒れた。
 上着を片袖に引っかけ、血相を変えて飛んできたレオンハルト。
 それでも彼は、許しを得るまで敷居を越えない。
 夫を呼ぶことが怖い妻。
 呼ばれない扉を叩くことが怖い夫。
 同じベルに正反対の傷を持つ二人は、互いを思いやるほど遠回りしてしまう。
 これは「必要だから」ではなく「会いたいから」と、もう一度誰かを呼べるようになるまでの、不器用な大人の再婚恋愛。

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短編 2026/07/20 20:01更新
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最終取得日時:2026/08/22 12:07
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