ヒューマンドラマ[文芸]

都会の森に硫黄が香る

「おい、おい、どうした?」

「え?」

「なにボーッとしてんだよ。頼んでたものは? ほら、早く出して」

「えっと……」

「やってねーのかよ。はぁ……マジなんなんだよ。眠くなるなら昼飯なんて食うなよな、はーぁ」

 先輩はそう言うと舌打ちをして離れていった。眠く……なっていたのか。確かにボーッとしていた。寝起きのような感じだ。おれは寝ていたのか?

『ひどいですねぇ。あの言い方はないと思いますよ』

 背後から声がし、おれは驚いた。後ろを振り返ると、そこには白衣を着た男がいた。おれが「誰ですか……?」と訊ねると、男は「わかってるくせにぃ」と言うように、ニヤリと笑った。ああ、確かにそうだ。おれはこの人に見覚えがある。

「えっと……そうだ、医者。ああ、先生じゃないですか」

『ええ、まあ。医者ではなく、心理カウンセラーですがね』

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短編 2024/06/01 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:27
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