宇宙[SF]

受け継がれる想い

「だからさあ、先祖の想いとか、そういうのがよくわからないんだよねえ。期待されても重いっていうかさあ。“おもい”だけに」

『……ええ、わかります』

「妙な間があった気がするけど、まあいいや。困っちゃうよねえ。まあ、向こうも困ってるだろうけどさ。僕なんかに全人類の想いを託しちゃってさ」

『ええ、わかります』

「そこはわかっちゃダメでしょ。励ましてくれないとさ。いえいえ、そんなことありませんよ、あなたは素晴らしい人間ですってさ」

『いえいえ、そんなことありませんよ』

「…………いや、続きは!? ただの否定に終わっちゃったよ! エバ、ほんと君はダメなAIだなあ。この宇宙船の船長である僕をもっと大事にしてくれないとさあ。どうするのさ、僕が病んで首でも吊っちゃったら、人類終わりだよ? 僕が最後の地球人なんだからさ」

『はい、自称船長』

「自称って……あ、もしかして自傷と掛けてる? ははは、しないよ、自傷行為なんて」

『ええ、私も見たくありません』

 人類が地球を離れたのは、数百年前のことだった。技術の粋を結集して建造された宇宙船、『ドーンオブホープ号』。生き残った人間たちはそこに乗り込み、環境破壊によって居住不可能となった地球を捨て、新天地を求めて宇宙へ旅立ったのだ。

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短編 2025/05/21 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:09
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