ヒューマンドラマ[文芸]

天使の手違い

「ここは……じ……じご……」

 ショックのあまり、男はその先の言葉を継ぐことができなかった。
 落ち着こうと大きく息を吸い込む。だが、鼻腔を突いたのは血と汗、雑巾、硫黄、吐瀉物、糞、そしてプラスチックを焼いたような強烈な臭い。喉に絡みつくその悪臭に、男は思わずむせ返った。
 沁みる目をこすりながら周囲を見渡す。赤黒い地面から、ところどころ煙が立ち上り、空はどこまでも曇り、重く垂れ込めていた。絶え間なくこだまするのは、苦痛に苦痛に満ちた叫び。
 男は自分が置かれている状況を完全に理解した。いや、認めざるを得なかった。

 ――間違いない。ここは地獄だ。

未設定
短編 2025/05/20 11:00更新
2,367字 41%
日間P
-
総合P
26
ブクマ
0
平均評価
8.67
感想数
0
レビュー
0
評価頻度
-
評価P
26
評価者数
3
週間読者
-
日間イン
0回
ベスト
圏外
最終取得日時:2025/07/09 12:09
※googleにインデックスされているページのみが対象です