異世界[恋愛]
塩漬けは料理ではないと、王太子は仰った。それきりでした
ヴェストハイム伯爵令嬢シーラの家は、千年続く「塩漬け師《しおづけし》」を務める。海塩・岩塩・湖塩を配合し、王家の肉・魚・野菜・果実・薬草を、季節ごとに違う比率で漬け込む。塩漬けがあるから王宮の冬は飢えない。
しかし婚約者の王太子は、シーラの仕事を理解しなかった。
「塩漬けは料理ではない。料理人が作るものだ」
左様でございますか。それきりでした。
婚約破棄の翌朝、シーラは王宮の塩蔵《しおぐら》から自家の調合塩瓶を全て持ち帰り、家業を畳んで南方の港町ポルト・ロサへ移った。
半年後、王宮の食卓に塩漬けが尽きた。冬の肉は腐り、保存野菜は尽き、薬草は乾き枯れた。誰も気づかない。なぜなら——塩を量る基準が、彼女と共に去ったからだ。
「塩は、命の重さを、知っている人にしか、量れません」
異世界転生 / R15 / 異世界恋愛 / 婚約破棄 / ざまぁ / 悪役令嬢 / ハッピーエンド / 女主人公 / 短編 / 塩漬け師 / 専門職 / 静かな離脱 / 因果応報 / 港町
短編
2026/05/10 19:00更新
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最終取得日時:2026/09/06 12:13
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