ローファンタジー[ファンタジー]

旅路

 岩と砂ばかりが彼の瞳に映る。荒廃した世界を彼は一人で歩き続けていた。戦争と環境破壊の末に人類が滅びた……などと彼は思いたくなかった。だから探し続けている。仲間を、亡骸ではなく生きた人間を。まったく手がかりないわけではなかった。吹き荒れる砂嵐から逃れ、入ったビルの残骸。そこの壁に文字が書かれていたのだ。

『我々はここを離れ、カデシュという町を――』

「『コランという町を目指すことにする。まだ緑が残っていると噂だ。方角は西。座標は』……か」

 彼はそう呟いた。カデシュという寂れた町(もっとも、そのほとんどが残骸だが)にたどり着いた彼は、まだ形を保っている家を何軒か調べた。そのうちの一軒で、壁に『コランという町を目指すことにする』と書かれているのを見つけた。
 あの瓦礫の地からここへ移り住んだ人々は、また移動したらしい。名もなき瓦礫の地からカデシュへ。そして今度はコランへ。

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短編 2024/08/04 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:24
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