異世界[恋愛]

いまさら必要ございません

「耳の役は要らない。弦の数を数える者がいればよい」——十一年この家の音を合わせてきたわたくしに、家令はそう申しました。

部屋の湿りで弦の緩みが違い、前夜の冷えで下がる弦が違います。雨の続いた週は低いほうから、火を焚いた翌朝は高いほうから。壁に留められるのは今朝の順だけで、その日の聞き分けは全部この耳の中にございました。

合わせる順を書いた紙は剥がされ、廊下の柱には弦数と人数が貼り出されました。「音など、表のとおりに締めればよい」。左様でございますね。数でよろしいのでしたら、表は残してまいります。

締め具も音叉も、壊しも持ち出しもいたしません。

夏のあいだは何も起きません。誰も弾かないのですから。「ほら、変わらん」と仰いました。変わらないことが、いちばん怖い時間でございます。

冬の集まりで弾き始めると、部屋の端の楽器から順に半音低うございました。誰も怒鳴りません。ただ翌週から招きの返事が減るだけでございます。

自分の仕事場を持ったわたくしの前で「戻ってくれ」と仰った家令へ、静かにお返しするお話。

AI直接使用 / 女主人公 / ざまぁ / ハッピーエンド / 西洋 / 令嬢 / すっきり
短編 2026/08/17 18:10更新
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最終取得日時:2026/08/19 12:05
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