姉に婚約者を奪われた第三王女クララは、追放された先で薬草の知識を使って活躍し、姉たちに復讐する!
ネーデルランド王国の王宮の奥にある薬草園。
そこで第三王女クララ=ネーデルランドは、ひとり静かに薬草を摘んでいた。社交界に興味を示さない彼女は、王宮では「変わり者の王女」と呼ばれている。
しかしクララには秘密があった。
亡き母から受け継いだ薬草の知識と治癒魔法である。薬草に魔法を込めることで、普通では作れない強力な薬を作ることができた。
その力は一度、王国を救っていた。
前年の冬、城下町で恐ろしい疫病が流行したとき、クララは薬を作って多くの民を救ったのだ。
――だが、その功績はすべて奪われた。
「民を救ったのは第二王女イリス様です」
王宮医師の発表で、手柄はすべて姉イリスのものになった。王妃の寵愛を受ける美しい第二王女。側室の娘であるクララに、逆らう力はなかった。
それでもクララは薬草園で静かに暮らしていた。
だがある日、運命は残酷に動く。
庭園で、姉イリスが――
クララの婚約者、公爵令息アバレロにキスしていたのだ。
「あなたより、わたくしの方が魅力的ですもの」
平然と言い放つイリス。抗議するクララだったが、王妃は冷たく言い放つ。
「側室の娘が王族を名乗ること自体が間違いです」
さらに王宮で勝手に薬を作った罪まで着せられ、国王は無情にも宣告した。
「第三王女クララを国外追放とする」
誰も味方はいなかった。
王宮を追い出されたクララが薬草園を去ろうとしたその時――
突然、知らない記憶がよみがえる。
車のライト、クラクション、倒れる身体。
それは前世の記憶だった。
花屋で働く三十五歳の女性として生きた人生。子犬を助けようとして命を落とした瞬間――。
「……転生?」
すべてを理解したクララは静かに立ち上がる。
薬草の知識。治癒魔法。そして前世の知恵。
「このままでは終わりません」
母が遺した言葉を胸に、クララは歩き出した。
向かう先は、母の祖国――スペイラ帝国。
追放された王女の運命は、ここから大きく動き出す。
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