ハイファンタジー[ファンタジー]

裏路地の隠れ家『BAR ZERO』。下戸の元情報屋が提供する極上の一杯は、追放された者たちを救い、悪党を密かに破滅へ導く

俺は酒が飲めない。
 なのに、十年間バーテンダーをやっていた。
 飲めないから、全力で考えた。飲めないから、酔わずに客の話を聞き続けた。飲めないから、誰よりも「人間」が見えた。
 それだけで、銀座で一番予約が取れない店になった。

 表の顔はバーテンダー。
 裏の顔は、政財界の裏側を握る「情報屋」。
 酔った人間だけが零す本音を、俺は一滴も逃さず十年間集め続けた。そしてある夜、知りすぎた代償を払って――死んだ。

 目が覚めたら、異世界だった。
 剣士になろうとは思わなかった。魔法師にもなれない。
 俺にできることは、ひとつだけだ。

 異世界の裏路地に、看板すら出していないバーを開いた。
 店の名は「BAR ZERO」。
 チートは三つある。この世界のあらゆる情報が脳内に自動で流れ込む「絶対情報収集」。膨大なデータを瞬時に整理・分析する神格AI「SOMA」。そして客の表情、声の揺れ、視線の逃げ方から真の悩みを一瞬で見抜く「鑑定スキル」。
 剣は使わない。魔法も使わない。
 カウンターから一歩も出ない。
 それでも、今夜この扉を叩いた客の人生は――明日から変わる。

冤罪で追放された元宮廷魔法師の少女が来た。
 俺は深紅のドラゴンフルーツと発光する薬草で「星屑のモクテル」を作り、真犯人の名前を添えて差し出した。
 お代はモクテル一杯分。
 スランプで引退を考えていた最強剣士が来た。
 剣技が衰えた本当の原因は「毒の慢性中毒」だと看破し、解毒効果のあるカクテルと毒を盛った人物の名を教えた。
 縁談相手が殺人犯だと知らない侯爵令嬢が来た。
 「この情報はサービスです」と一言添えて、証拠を渡した。
 俺は誰とも戦わない。
 ただ、来た客全員の「本当の問題」を見抜いて、最適な一杯と情報で解決する。それだけだ。

やがて噂は広まる。
 「裏路地に、何でも解決する店がある」と。
 国王が来る。大魔法使いが来る。暗殺者ギルドのボスが来る。全員、カウンターの椅子に座って、一杯飲んで、帰っていく。
 店には完全個室のVVIPルームが生まれ、「シルバー・ゴールド・ブラック」の会員制が生まれ、最強の用心棒が守護に就き、スラムから拾った少女がフロアを駆け回るようになった。
 気づけば「BAR ZERO」は、どの国も手出しできない異世界最大の情報ギルドになっていた。

異世界転生 / コミックルーム大賞 / アイリスIF9大賞 / ESN大賞11 / なろうフェス2026 / 異世界ファンタジー / 主人公最強 / バーテンダー / 経営 / チート / AI / バー / 異世界
全109話連載中 2026/10/08 22:00更新
442,044字 (4055.4字/話) 43%
日間P
12
総合P
198
ブクマ
32
平均評価
9.57
感想数
0
レビュー
0
評価頻度
43.75%
評価P
134
評価者数
14
週間読者
144
日間イン
0回
ベスト
圏外
最終取得日時:2026/10/09 12:13
※googleにインデックスされているページのみが対象です