純文学[文芸]

残芯

火葬技師として働く私は、火葬のあとにごくまれに残る小さな白い欠片を、この町で「残芯」と呼ぶことを知っている。遺された者が死を受け取るための形として、私はときにその欠片を見つけ、ときに似たものをそっと差し出してきた。誰のものとも知れない白さが、誰かを泣かせ、誰かを救うことがあるからだ。
けれど、十二月の終わりに母が死んだ時、骨の中にはどこにも“それらしいもの”がなかった。兄だけを愛し、父の失踪のあとも私をまっすぐ見なかった母。憎み切れず、愛し切れず、最後まで平らなまま残ったその死に、私は自分のための残芯を欲しがっていることに気づく。
骨に残るものと、死んだあともこちらの手つきを変えてしまうもの。そのあいだに残る、どうにも名前のつかないものを見つめる物語。

家族 / 母娘 / 喪失 / 死 / 遺族 / 死別 / 火葬場 / 火葬技師 / 骨 / 記憶 / 不在 / 罪悪感 / ヒューマンドラマ
短編 2026/04/19 12:08更新
5,650字 3%
日間P
-
総合P
184
ブクマ
9
平均評価
8.3
感想数
0
レビュー
0
評価頻度
222.22%
評価P
166
評価者数
20
週間読者
-
日間イン
0回
ベスト
圏外
最終取得日時:2026/10/15 12:17
※googleにインデックスされているページのみが対象です