100万回転生して、感謝のファイアボール1垓回撃ったら最強になってた
とある小さな村に、ファイアボールを撃ち続ける少年がいた。
初級魔術で、最も簡単と言われるファイアボールは、小さな子供さえも撃てると言われていた。そのため、ファイアボールしか唱えられない彼は、当然のように馬鹿にされていた。
大概の人間は、それで、ファイアボールを撃つのをやめるだろう。
だが、彼はやめなかった。
馬鹿にされ続けても、彼は、ひたすらファイアボールを撃ち続けた。
朝食、昼食、夕食、合わせて45分に、睡眠3時間……合わせて3時間45分、最低限の肉体保持に必要な時間以外は、全て、火球《ファイアボール》に費やした。
そんな彼のファイアボールは、音速を超えて、ついには生き神様とまで呼ばれる存在になる。
しかし、彼も寿命には勝てない。生涯、ファイアボールを撃ち続けた彼は、ひとり、死に絶えようとしていたが……
「コレは……まさか……若返ってるのか……?」
山の中で見つけた謎の転生器によって、若返り、少年時代の肉体を得ることが出来た。
若返った彼は、
「とりあえず、ファイアボールでも撃つか」
また、ファイアボールを撃ち続けた。
彼は、100万回の転生を繰り返し、感謝のファイアボール1垓回を撃ち終え……いつしか、彼は、最強へと至っていた。
永き時を経て、ファイアボール以外の魔術に興味を持った彼は、山を下りて有名な魔術学院に入学する。
ファイアボールしか使えない彼は、学院の入学試験で、最低ランクのEランクをつけられてしまうが――
「なんだ、今のは、上級魔術《アドヴァンス》かっ!?」
「今のは、上級魔術《アドヴァンス》じゃない……火球《ファイアボール》だ」
彼のファイアボールは、既に、人外の域にまで至っていた。
生涯をファイアボールに捧げ続けた男が、普通レベルの魔術師が集う魔術学院でなにを為すのか。
とりあえず、彼は、今日もファイアボールを撃っている。
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