空想科学[SF]

寿命

 彼は公園のベンチに座っていた。何時間も微動だにせず、ただ上を見上げ、空を眺めていた。その表情からは心に何を浮かべているのかを読み取ることはできない。その姿は、まるでたった一人で時の流れに置き去りにされた者のようだった。
 やがて、日が暮れかけた頃、彼はようやく視線を下ろした。声をかけられたからだ。

「どうも。隣、失礼しますよ」

「…………おぉ、君か」

「ははは、反応が鈍いですね。久しぶりに会ったというのに」

「……ははは、すまないね。年寄りなものだからねぇ」

「またまた、まだ現役でしょう?」

「……ははは。そう言ってくれるのは、君くらいなものだよ。同世代の友人はどんどん先立ってしまったなぁ」

「ああ、それはお気の毒に……。でもね、僕にとってあなたがその友人なんですよ。元気でいてくださらないと寂しいです」

「…………ふふっ、ありがとう」

「それで、今日は耳よりの話を持ってきたんですよ」

「……話?」

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短編 2024/09/01 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:22
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