コメディー[文芸]

計画性

 とあるアパートの一室。ソファに座っていた女は、インターフォンが鳴ると立ち上がり、ゆっくりと玄関に向かう。

「はい、いらっしゃい。わっ、お花? ふふっ、どうしたの?」

「はははっ、理由がないと彼女に花を贈っちゃダメかな? あ、ケーキもあるよ」

「ふふふ、ありがと。さ、入って」

「お邪魔します。あ、線香を上げてもいいかな。仏壇とかある?」

「あ、うん、ありがとう。でも大丈夫」

 男は彼女の返事に対し、「そうか」と言い、優しく微笑んで、カーペットに座った。

「さてと、それでどう、元気?」

「うん。まあまあかな……あの子を失ったのは、やっぱり、つらいから……」

「そうか……」

「……でも」

「うん?」

「最近は、こう思うようになったの。あの事故は、あなたと出会うきっかけになったって……」

「そうか……」

「ふふっ、あなたったらあの時、救急隊員の人に『関係ない人は乗れません』って言われて『恋人です! 恋人なんです!』って、必死に言ってたよね。まだ付き合うどころか、お互い、名前も知らなかったのに」

「あ、あれはそう言わないと一緒に乗せてもらえないと思って……やっぱり、聴こえてたんだね。意識がないように見えていたけど」

未設定
短編 2024/08/03 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:24
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