ヒューマンドラマ[文芸]
自殺代行サービス
「……死にたいな」
夜、バイトを終えて帰り道を歩いていた男は、ふいにそう呟いた。すぐに咳払いし、後ろを振り返る。思ったより声が大きく漏れてしまったのだ。
誰もいないことを確認した彼は、今度は深く息を吐いた。
風が吹き抜け、電線を揺らし鋭い唸りを上げる。その音は、まるで彼のがらんどうの胸を通り抜けて鳴っているかのようだった。
死にたい――そう口にしてしまうことが、最近の彼には増えていた。
特に病気があるわけではない。だが、健康とも言い難い。体の芯に常に重石があるようで、朝起きても疲れが取れず、だるさが居座る。それがもう何年も続いていた。
鬱病――学生時代に受けたいじめのせいかもしれない。ふとした拍子に、嫌な記憶が蘇り、虫歯の疼きのようにキリリと精神を刺し、悶えさせるのだ。
だが、理由はそれだけではない。失敗した過去の後悔、無駄にした時間、見えない未来への恐怖。いくつもの要因が重なり、つい「死んだほうが楽だ」と思ってしまう。そして、その考えに浸っている間はどこか心が安らいだ。
未設定
短編
2025/10/24 11:00更新
4,478字 40%
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最終取得日時:2025/10/27 12:05
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