狐の嫁とその男 ~力を手にするための契約結婚。本当の生贄は、私じゃない。
――どうしよう。本当の生贄は、私じゃない。
静津(しづ)は、大日本帝国で生きる、十八歳の赤毛赤目の村娘。
三年前に父が亡くなり、母と妹と共に細々と暮らしていた。
母が病に倒れ、多額の治療費が必要となったところに、「赤毛赤目の娘を萩恒公爵の嫁にするため探している」とのお触れが出る。
褒奨金付きであったため、静津はすぐさま立候補し、萩恒公爵である崇詞(たかし)の妻となった。
しかし初夜で初めて対面した夫・崇詞は、この婚姻を望んでいなかったという。しかし必要に迫られてものであるため、静津との婚姻については、仮初の婚儀――契約結婚とすると宣じてきた。
その一方で、家令や侍女達は、静津に対し、崇詞に抱かれて来いとせっついてくる。
褒奨金の心配をしたこともあり、静津は初心ながらに、家令や侍女達に渡された教本を手に、崇詞に猛烈な誘惑を仕掛け続ける。
最終的に絆された崇詞は、この婚姻の事情について、静津に説明した。
静津と崇詞の婚姻は、「祭(さい)」を行うためのもの。
祭を行うためには、崇詞が萩恒の男として、異能の力を手にする必要がある。
そして、萩恒家の男が異能の力を手にするためには、妻を「狐の嫁」という生贄として、狐神に捧げる必要があるというのだ。
とはいえ、「狐の嫁」としての責務は、ただ一緒に家の中で過ごし、夜は同じ床で寝ていればそれでいいというもの。
静津は崇詞と、その弟の聡詞、家令や侍女達と共に、穏やかな日々を過ごす。
しかし、穏やかな顔をしながらも、日々思いつめた様子になっていく崇詞。
そんな崇詞に静津は手を差し伸べるも、崇詞はそれを拒絶する。
そして、「祭(さい)」を行うために家を出る崇詞。
見送った後、静津は崇詞の六歳の弟・聡詞(さとし)により、「祭(さい)」によって崇詞が命を落とすであろうことを知る。
そして静津は、狐の嫁として決断する。
※全16話か17話予定。12話まで書き上げてます。
※他サイトにも掲載中。
31,982字 (3997.8字/話) 38%