ヒューマンドラマ[文芸]

手塩にかけて育てた教え子が婚約者と結婚していたので、二人に与えてきたものをすべて引き上げることにしました

 秋の三連休に予定していた結婚式の打ち合わせをするため、両家の家族が市内のホテルに集まった。私と黒川拓海は八年間付き合っており、テーブルには式場のパンフレットが何冊も並んでいた。親たちが招待客について話し合う横で、拓海はスマートフォンを個室のBluetoothスピーカーにつなぎ、披露宴で流す予定の曲を再生していた。

 一曲目が終わった直後、拓海のスマートフォンに音声メッセージが届いた。まだスピーカーと接続されていることを忘れていたのか、彼は無意識に再生ボタンを押した。

「拓海、いつ帰ってくるの? 新婚なのに、今夜も一人で寝ろっていうの?」

 若い女の甘い声が、個室いっぱいに響き渡った。誰もが口を閉ざし、拓海は血の気を失った顔で慌てて接続を切った。けれど「新婚」という言葉は、すでにそこにいた全員の耳に届いていた。

 私は、その声を知っていた。

 水野奈緒。四年間、私が手塩にかけて育ててきた教え子であり、かつては誰よりも信頼していた相手だった。

 最初に我に返ったのは、拓海の母親だった。箸を置き、息子をまっすぐ見つめる。

「どういうことなの?」

シリアス / 女主人公 / 婚約破棄 / 不倫 / ざまぁ / 因果応報 / もう遅い
短編 2026/08/05 16:00更新
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最終取得日時:2026/09/17 12:08
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