純文学[文芸]

別れ宿

 ある雪の夜、白く染め上げられた大地に一本の灰色の道路が線を引いていて、その上を一台の車が走っていた。周囲には民家もなく、窓の向こうには、ただ闇の中に佇む木々が雪を被り、無言で彼らを見送っている。その雪景色を助手席で眺める女のため息がガラスを僅かに曇らせた。

「……ねえ、なんでいつもの車じゃないの?」

「ああ、ちょっと修理に出していてさ。前にも言ったと思うけど」

「だから、こんな地味な車でなくてもいいじゃない」

「まあ、いいじゃないか。どうせ暗いしさ。ははははっ」

ショートショート
短編 2024/05/30 16:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:27
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