その他[その他]

処刑準備

「五十六番。これをつけて外に出なさい」

「……はい」

 とある国の刑務所。死刑囚である彼は、看守に言われるまま、小窓から投げ入れられた黒い目隠しを手に取った。震える手でそれを装着する。
 ガチャリ――独房のドアが開く音が響いた。

「立つんだ。さあ、そのまま歩いて。おっと、大丈夫か?」

 膝ががくんと折れ、よろけた。
 看守の声に促され、彼は独房を出て廊下を歩き始めた。ごくりと唾を飲み込む。独房の外の空気は、どこか乾いていた。視界が遮られたせいか、慣れて気にもしなかったはずの刑務所の匂いが妙に鼻を刺す――古びたコンクリートの湿気、どこかこびりついた錆臭さ。

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短編 2025/04/08 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:12
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