ヒューマンドラマ[文芸]

落下ピエロ

 ――エレベーターの階数は自分の地位を示すと誰かが言っていた。しかし、ピエロとの遭遇については何も言わなかった――


 ある晴れた月曜日の朝、僕の心臓は激しく波打っていた。高いところから落としたボールが跳ね上がるように。そう、目の前にそびえる、この高層ビルのような……。

「あ、すみません……」

 ビルに向かって歩く途中、肩が軽くぶつかり、僕は頭を下げた。相手は振り返ることなくビルの中に吸い込まれていった。どうやら、ぶつかったことに気づきもしなかったらしい。もしかしたら、僕なんか石ころとでも思われたのかもしれない。ああ、確かに場違いだ。手違いだったのかもしれない。このあまりいいニュースを聞かない不景気で、荒んだ世の中で、僕のような普通の大学……底辺大学の学生が、大企業の面接を受けに来るなんて。
 けれど、ここまで来て引き返すわけにはいかない。そうだ、発想の転換だ。ここに立っている時点で、僕にはこの会社で働くチャンスがあるのだ。そう自分に言い聞かせて胸に自信を押し込み、僕は自動ドアをくぐった。

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短編 2024/11/10 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:19
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