ヒューマンドラマ[文芸]
ぶつかりおじさんぶっ殺しおばさん
――あの人、まさか……。
その光景に、ミカは戦慄と同時に高揚を覚えた。
駅構内は通勤ラッシュのざわめきに満ち、利用客たちが波のように行き交っていた。その人混みの中で、ミカは妙な動きをする男に目を留めた。
中年の男が、わざとらしく女たちにぶつかっていく。狙いを定めるように視線を向け、すれ違いざまに肩や腕をぶつけていくのだ。ぶつかられた女たちは皆、一様に驚き、眉をひそめて振り返ったが、男は何事もなかったかのようにその場を離れていく。
忙しい時間帯だ。女たちも訝しむが、わざわざ追及する者はいない。
――間違いない。『ぶつかりおじさん』だ。
未設定
短編
2025/06/20 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:07
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