ヒューマンドラマ[文芸]

咳をすると二人

 ……昨日、傘を持っていかなかったのが悪かった。いや、正確には折り畳み傘を持っていたのだが、開いてみると、まるで轢死体のように無惨に壊れており、使い物にならなかったのだ。いつぞやの風が強い日に壊れたのを忘れていた。
 コンビニで新しい傘を買うことも考えたが、金が惜しくてやめた。結局、全身を濡らして帰宅し、その結果、風邪を引いたらしい。
 熱のせいか体がだるく、頭もぼんやりしている。喉は棘が刺さったように痛み、鼻水は垂れっぱなし。見上げた天井はぐ~るぐる。

「あーあ……ゴホッ……えっ」

「おっ」

「な……お、おれ……?」

 これは、いったいどういうことだ……。突然、目の前にもう一人の自分が現れたではないか。

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短編 2025/04/03 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:12
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