空想科学[SF]

ファーストチキン

「おーすっ、わざわざ来てやったぞぉーい」

 と、ドアを開けるなり友人がそう言い、ぐいとこちらに顔を近づけてきた。
 おれは奴を部屋の中へ迎え入れたが、釈然としない。いきなり訪ねてきて「わざわざ来てやった」とはなんだ。この野郎が。

「なんだよ、麦茶かよ。年寄りくせえな、お前」

 ベッド、それも枕の上にドカッと座った奴は、わざわざ飲み物を用意してやったおれにそう言った。
 おれは自分を「おれは心が広いんだ」と慰めた。

「で、わざわざ何の用だよ。いきなり来てさ」

 と、皮肉で反撃してみたが、図太い性格のこいつは意に介さないだろう。たまにこいつが羨ましくなる。これは皮肉ではなく。

「ははははっ、いやぁ、お前が電話を持っていれば、こうしてわざわざ会いに来なくてもよかったのになぁ」

未設定
短編 2024/06/17 11:00更新
3,338字 80%
日間P
-
総合P
10
ブクマ
0
平均評価
10
感想数
0
レビュー
0
評価頻度
-
評価P
10
評価者数
1
週間読者
-
日間イン
0回
ベスト
圏外
最終取得日時:2025/07/09 12:26
※googleにインデックスされているページのみが対象です