戦場から夫の鎧が帰ってきました
私は夫の顔を覚えていない。
貴族同士のお家の事情で結婚した彼は、ろくに会う機会もないまま戦争に行ってしまい、終戦後、物言わぬ鎧となって帰ってきた。
「おかえりなさい……と言っていいのかしら」
鎧を前に呆然とする私を老執事は諌めた。
「奥様、そんな事を言っている場合ですか!」
たしかに不適切な気はする。
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出征時の全身甲冑姿の夫しか覚えていない奥様が、戦後の混乱期に片田舎の領地を守りつつ、愛する夫を取り戻すまでのお話です。
……シリアスっぽく始まりますが主要キャラは概ねトンチキです。
2話から登場の銀髪美少女勇者様と胡散臭い従者のコンビが主人公達に翻弄されるさまもあわせてお楽しみください。
「どうしろっていうのよ〜っ」
「どうしようもないですねぇ」
ゴシックホラー風味のシリアスな状況を、トンチキキャラによる勘違いとすれ違いと策謀が交差するコメディを織り交ぜつつ、内政、ロマンス、アクションてんこ盛りで解決して、ハッピーエンドまでお送りします。
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【詳細あらすじ】(ネタばれあり)
家の都合で決められた結婚で、魔導王国の公女ヴィクトリアは北の辺境のバロール領主のもとに嫁いだ。ろくに会う機会もなく神聖帝国との開戦で戦地に赴いた夫はそのまま帰らぬ人となった。
敗戦後の混乱期に領主代理として領地を守っていたヴィクトリアのもとに、ある夜、黒い騎士がやってくる。
それは色こそ違えども確かに彼女の夫の鎧だった。
この世のものではない存在として帰還した鎧には、夫の意識が宿っていたが、言葉も話せぬ鎧相手ではコミュニケーションもままならない。困惑するヴィクトリアに追い打ちをかけるようにもたらされたのは、神聖帝国の勇者来訪の報だった。
神聖帝国が略奪許可すら与えている勇者にバロールを踏みにじられるわけにはいかない。黒騎士はバロールのために戦うとヴィクトリアに誓う。
しかし勇者の目的は、呪われた幽世の者を討ち果たすことだった。
風が吹きすさぶ辺境で、しっかり者の美人の奥様"有角の公女ヴィクトリア"が、ふてぇ根性のバロール家臣団と共に一致団結して危機を乗り越えます。
果たしてヴィクトリアは中身のない鎧になってしまった旦那様を無事に取り戻すことができるのか?
喋れない鎧さんの、かわいそかわいいカッコよさを、凛々しい奥様と一緒にお楽しみください。
32,842字 (3284.2字/話) 55%