異世界[恋愛]

第十王子と本の虫

 怒りっぽくて、短慮だけど、素直な人なのだな。性格的に私とは合わなさそうだけど、仕事上のパートナーとしては、やれないこともないかもしれない。
 
「まだお仕事が無いようでしたら、続きを読みたいのですが、よろしいでしょうか」
 
「はあ……別に許可なんていい。これから長い付き合いになるんだ、読みたい時は勝手に読め」
 
 曇天の隙間から覗いた光明を頼りに、私は読書の続きに取り掛かった。気持ちが少し晴れたからか、先ほどよりもページを捲る手が軽い。気が付けば、手の震えは完全に止まっていた。
 
「……なあ、そんなに読書が好きなのか」
 
「他の趣味を知らないだけです。家では他にやることも無かったので、空いてる時間に本を読むのが当たり前になってまして」
 
「哀れだな。読書なんて、机に向かって椅子に座ったら、後はずっと暗記しながらページを捲る作業じゃないか」
 
「それは読書じゃなくて、暗記のお勉強でしょう」
 
「読書とはそういうものだろ?」
 
「全然違います」
 
 これだけの本に囲まれながら、読書の楽しみ方も知らないとは。仕方ない、私が教えて差し上げよう。

ネトコン13 / ほのぼの / 女主人公 / 西洋 / 日常 / 青春
短編 2025/06/22 10:51更新
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最終取得日時:2025/07/01 12:06
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