ヒューマンドラマ[文芸]

私がハサミで切られても彼は「大げさだ」と言ったのに、彼女が低血糖になっただけで震えるほど心配した

 うつ病と診断された日は、ちょうど私の二十四歳の誕生日だった。

 小さなケーキを持って病院へ行った。久世直人に、たった十分だけ一緒にいてほしかった。

「直人、少しだけ付き合ってくれない?」

 彼は顔も上げなかった。

「澪、今は君の気持ちに付き合ってる暇はない」

「でも、今日……私の誕生日なの」

「一分も無理だ。悪いけど出て。ドアも閉めてくれ」

 私が背を向けた瞬間、小日向ひよりの明るい声がした。

「久世先生、今日も一緒にお茶してくれますよね? 先週は五時間もアイロンビーズに付き合ってくれたし」

 直人の声が、途端に優しくなる。

「もちろん」

 その瞬間、ようやく分かった。

 私に使う十分は無駄なのに、彼女に使う一日は惜しくない。

 私を五年間閉じ込めていた暗い部屋は、うつ病なんかじゃなかった。

 久世直人だった。

シリアス / 女主人公 / 現代 / 医師 / 後悔 / 別れ / すれ違い / ざまぁ
短編 2026/08/28 14:29更新
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最終取得日時:2026/09/25 12:07
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