ヒューマンドラマ[文芸]
避難所
「荷物はすべてこちらで管理させていただきまーす。ポケットの中身も、この机の上に全部出してくださーい」
「え、はい……」
少し妙だなと思ったが、「はい」とつい答えてしまったからには仕方がない。マニュアルがあるのだろう。非常事態だ。素直に従った方がいい。そう考えたおれは、折り畳み式の長机の上にポケットの中身を並べた。
それにしてもすごい地震だった。こういった災害時には中学校の体育館が避難所になることを知っていたから、荷物を纏めてやってきたが、よかった。おれだけでなく、みんな集まっているようだ。自宅アパートは停電し、いつ断水するかもわからない。何より、独りだと心細かった。
「鞄も机の上に置いてくださぁい!」
体育館の出入り口には折り畳み式の長机が置かれており、その机の後ろに女が三人、横に並んで受付をしていた。
おれはその中の一番左、入り口に近い女にリュックサックを渡そうとしたが、真ん中の女に怒鳴られてしまった。左の女は「女性に重いものを持たせるなんて最低。普通、わかるでしょ」とブツブツ呟きながら机の上に置いたリュックの中身を物色し始めた。
未設定
短編
2024/06/07 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:27
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