空想科学[SF]

百年後へ

「つまり――で――なる。ゆえに――だ。私の理論が正しければこれで、正しい、正しい正しい、ああ……」

 とある研究所。博士は一人呟き続けていた。もう何回目になるだろうか、自身が掲げる理論の精査をしているのだ。しかし、それはやがて世に向けた呪詛に変わり、ともすれば、博士の姿もまたそれ相応に見えてくる。伸びきった髪と髭。爪はひび割れ、肌には掻いた痕が残っている。その老体は、修復を諦めた廃寺のように見えた。
 
 ――無理だ。タイムマシンの開発など。

 突然、博士は叫び声を上げ、嵐で揺れる木のように身を大きく揺らし、机の上にあるものを床に叩き落とした。
 その心の声は、かつて自分を冷笑した人々のものと、内から湧き上がる自分のものが重なり混じり合っていた。
 

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短編 2024/08/10 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:24
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