ヒューマンドラマ[文芸]

覚えられない顔

 旅を趣味とする、とある女。山林の中の道路を、一人バイクで走っていた。
 仕事、都会、人間関係――煩わしいものすべてから離れ、ただ気ままに流す。日常の喧騒から解放されるこの瞬間が、何よりも好きだった。適当な場所で宿を探して一泊する。それがこの旅のスタイル。

 ――ん?

 順調に山道を登っていたそのとき、ふいに舗装されたアスファルトが途切れ、未舗装の道へと変わった。
 女はしぶしぶバイクを停めた。
 だが、道はまだ先へと続いているようだ。ここで引き返すのはつまらない。むしろ、誰も行かないような場所に分け入るのが、この旅の醍醐味だ。先ほど休憩中にナンパされたこともあり、人のいないところに行きたい気分だった。
 冒険心が静かに燃え上がり、女は再びエンジンをかけた。
 だが、数分ほど走ったところで――。

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短編 2025/05/26 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:09
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