呪われ声の人形姫、帝国の将軍閣下に望まれ詠う
――エリザベート王女の声は呪いの声。『白の王妃』が亡くなったのも、呪いの声を持つ王女を産んだから。あの嗄れた声を聞いたら最後、死んでしまう。ーー
母親である白の王妃ことコルネリアが亡くなった際、そんな風に言われて口を聞く事を禁じられたアルント王国の王女、エリザベートは口が聞けない人形姫と呼ばれている。
しかしエリザベートの声はただの掠れた声(ハスキーボイス)というだけで、呪いの声などでは無かった。
普段から城の別棟に軟禁状態のエリザベートは、時折城を抜け出して幼馴染であり乳兄妹のワルターが座長を務める旅芸人の一座で歌を歌い、銀髪の歌姫ミーナとして人気を博していた。
そんな中、隣国クニューベル帝国の皇帝コンラートとその右腕であるアルフレート将軍がこの国を訪れ、三人の王女の中から将軍の妻を選ぶという話が持ち上がる。
エリザベート以外の王女達はその話に色めき立っていた。
しかし隣国の英雄でアルント王国の危機をも救ってくれた将軍アルフレートの妻に選ばれたのは、エリザベートであった。
婚約者のアルフレートと共にクニューベル帝国へと渡ったエリザベート。この時はまだ、国同士の繋がりの為に嫁ぐのだと信じ、不安を感じつつも何とか日々を過ごす。
そしてアルフレートと近しい悪役令嬢?レネの登場で、エリザベートの心は強く揺さぶられる。お陰で自分の恋心に気付くことが出来たエリザベートは、帝国独特の文化である婚前旅行というイベントもあり、相思相愛となった。
帝国まで追いかけてきた旅芸人一座と共に、ここでも歌姫ミーナとして舞台に立つエリザベートは、ガーランという不思議な奇術師と知り合っていた。
そして実は、そのガーランにはとんでもない秘密があって……。
残酷な真実、温かな愛、すれ違う想い……。
再びエリザベートを苦しめる為に現れた悪意。襲われ、監禁されたエリザベートは、目の前で繰り広げられる悲しい愛の終わりに胸を痛めるのだった。
監禁事件後、エリザベートはアルフレートに勇気を出して自分の本心を伝え、絆を深めた。
エリザベートの良き理解者である侍女レンカの意外な相手への恋の行方にも注目。
後半の物語では、リズミカルに様々な謎が解けていく心地良さを意識しました。
『アルファポリス』様にも掲載中。
124,097字 (2256.3字/話) 59%