ヒューマンドラマ[文芸]

三途の川の船頭さん

 深夜、とある家。布団に横たわる男が、枕元の携帯電話に手を伸ばした。まるでカタツムリの歩みのように、ゆっくりと。
 彼は自分の寿命が尽きるのを悟っていた。指先が震え、冷え切っている。呼吸は浅く、胸の奥がじんわりと痛む。だからこそ、最後の力を振り絞り、電話をかけようとしているのだ。
 コール音が響き、相手に繋がると、彼はか細い声で言った。

「……あ、もしもし、三途の川渡しの船頭さんでっか?」

「おう、そうやけど、どなたさん?」

「ぼちぼち死にそうなんで、船の予約をお願いしたいんですわ」

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短編 2025/04/15 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:11
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