幼馴染は幻想
アニメや漫画、小説を読んで時々憧れることがある。「異性の幼馴染」というやつだ。
お互いの部屋に入り浸ったり、当然のように一緒に登下校したり、時には窓越しに語らったり。
あるいは、小さな頃にとても大事な約束をしたけど、大きくなるにつれて疎遠になり、それがきっかけで
距離が近づいたり。いずれにせよ、幼い頃から続く強い想いがあって、恋愛が成就するにせよしないにせよ、
男女であっても男女以前の部分でお互いを大事にしている、そんな関係性。
「俺も幼馴染の女の子欲しいなあ」
なんて思う俺は高校二年生の男子、上条陽介(かみじょうようすけ)。中肉中背、得意な事も苦手な事も特になし。
友人はほどほどにいるけど、幼馴染と呼べる女の子なんぞ居ない。
一人異性の友人がいるけど、同小からの友達で同中・同高に進学しただけの存在だ。
「何寝言言ってるのよ」
同小からの友人である春奈の部屋でだらだらしつつ愚痴ってみるも軽く一蹴されてしまう。
さっき言った異性の友人である春奈だ。冷静沈着でサバサバしてるのでなんだかんだ馬が合う。
ただ、家族ぐるみでの付き合いもないし、幼い頃の約束もない、普通に仲良くしている同小出身の友人。
それ以上でもそれ以下でもない……はず。
というか、そうであってくれないと困る。色々な意味で。
春奈がそう思ってくれてるか甚だ疑問だけど。
愚痴っている中、不機嫌そうに春奈から発せられた、
「そんな幻想(フィクション)のことより、今の私を見て欲しいんだけど?」
真剣な言葉。過去に破局した同小出身のカップルを念頭においての発言だろう。
でも、仕方がないじゃないか。あの二人を間近で見てたら、お前との関係を進めるのだって怖くなる。
なんて言い訳だな。本当に自分が嫌になる。
それでも……そろそろ前に進まなきゃいけないのかもしれない。
6,361字 29%