ヒューマンドラマ[文芸]
選んだ地獄
「さあさあ、どれにしますか? この中からお好きなのをお選びください」
男は驚いた。地獄に落ちたことに対してではない。彼の人生は荒んでいた。人間関係に恵まれず、常にナイフを擦り合わせるような緊張感がつきまとっていた。人を傷つけ、また傷つけられてきた。仲間と呼べる存在ができたこともあったが、裏切られ、最後には背中を刺されて失血死した。
だから死後、自分が地獄行きだと知らされても、特に驚かなかった。むしろ当然の帰結だと思った。ただ、どの地獄に行くかを自分で選べるという点に、少し驚いたのだ。
赤黒い肌の鬼が巻物を手渡し、にやにやと口角を吊り上げながら言う。
未設定
短編
2025/05/16 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:09
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