ヒューマンドラマ[文芸]

妊娠の夢

 ――あっ、うふふ。ほら、触って。お腹を蹴ってるわ……。

「うおっ……夢……か……夢だあ……」

 目を覚ましたおれは、そう呟き、額に滲んだ汗を手の甲で拭いながら安堵の息を吐いた。

「まただ……またあの夢だ。あの女……」

 このところ、毎晩のようにあの夢に悩まされている。すべての始まりは、あの夜だった。
 夢の中で、おれは一人の女を抱いた。透き通るような白く滑らかな肌、艶やかな黒髪、吸い込まれそうな深い瞳――。現実なら誰もが振り返るような完璧な美女だった。匂いも、肌の温もりも、息遣いまでもが妙に生々しく、目覚めたあとには夢だったことを本気で残念に思い、しばらくはその余韻に浸ったものだ。
 夢というのは、脳の奥底に沈んでいた記憶や意識がかき混ぜられ、表面に浮かび上がってきたものだ。だが、あんな美女と会った覚えはなく、不思議に思った。そして、もう二度と会えないのだろうとも。
 しかし、それから数週間後、あの女は再び夢に現れた。

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短編 2025/06/09 11:00更新
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最終取得日時:2025/07/09 12:08
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